変化させてきた、リーダーシップのスタイル
10年ほど前にヤフーでリーダーシップ研修みたいなプログラムを受けさせていただいて、フォロワーシップという概念を学んだのを覚えている。
そのプログラムで見せられた動画として、例えば早稲田大学ラグビー蹴球部元監督・中竹竜二さんや、指揮者のいないオーケストラとして知られるオルフェウス室内管弦楽団についてふれられたものがあった。
いわゆる「強いリーダーシップ」とは別の概念として、どうフォロワーシップを育むのか、チームとして強くなるのかという観点が強調されていた。私はぼんやりとそれを眺めて「今この会社はこういうリーダーシップを求めているんだな」と感心していた。
なんというか、すごくわかりやすいメッセージだった。
時は過ぎて、あれからBuzzFeed 日本法人を立ち上げてSmartNewsに転職し、今はリクルート/Indeed JPでHR Product に携わっている。その中でいろんなリーダーに出会ってきたし、それぞれ個別のリーダーシップのスタイルがあったように思える。
明確なストロングスタイルによるリーダーシップを発揮して全体を牽引しようとする人もいれば、柔和なスタンスで調和をとり、なんとなく全体をまとめて気がついたらその人が考えていそうな方向に進んでいく“ふんわりリーダーシップ”の人もいた。
一方、この10年で仕事そのものも変化し続けているように感じる。
ビジネスとして解いている問題は複雑性を増し、業務の高度化も進んできたことから、それぞれのスキル/経験に求められる要求や役割も過去のそれとは変化してきた。
特に、ソフトウェアの領域においては顕著だろう。ハードウェアや金融工学もそうかもしれない。知らんけど。
私自身がどのような環境下にいるかというと、なかなかカオスである。
複数プロダクト、事業があり、それぞれ異なる責任者が立っている
そもそも組織の規模が大きく、関係者の数も多いし英語圏のメンバーもいる(そして会社は別)
立ち上げ、立て直しと複数のプロジェクトが並行して進んでいる
Machine learning をメインで取り扱うこともあり、理解しているメンバーは多くない
なんというかひとことで言いづらいのではあるが、とても複雑である。複雑というか、面倒くさいというか。このような状況下で「弱い、またはゆるい」リーダーシップは機能しづらい。
まあでも一定規模になるとだいたいこのような環境かもしれない。組織は大きいし、関係者は多いし、product lifecycle 的にいろんな状況のプロダクトが存在しているし。いわゆる大企業、外資とのミックスされた企業を思い浮かべると良いかもしれない。
そのような状況下でどのようなリーダーシップが機能していたかというと、明確なスタンスと意思表明、そしてできるだけ精緻な細部の理解である。
ユーザーのペインやKFSがどういうものなのか、それを作るためにどのような開発が “大枠としては” 必要になるのか、テストでどのようなインパクトが出そうなのか、その後続でどのようなroadmap を引くのが良いのか。
多少なりとも理解したうえで、明確にスタンスを示して合意をとりつけようとすること。
つまり何ができると良いのかでいうと、「わかってんなこいつ、大丈夫そうだな」という安心感を提供することであろう。
ということを今年に入ってつらつらと感じており、私としてもできるだけ自分なりに手を動かして物事を理解し、明確にスタンスを表明して進めようとしてきた。
かつての私はどちらかというと柔和で、軟着陸させることが得意で、ゆるやかに合意形成をしながら結果を出していくようなタイプだった。そこから意識的にスタイルを変化させてきたと思う。
結果的に、「入社したときはやわらかい人だったのに、どんどん戦闘民族になってますね」と同僚に言われるようになってしまった。
そのようにして変化を続け、その中でも残り続けているものが自分なりのスタイルなんだろう。状況に合わせて自己変革できるかどうか、というのはサラリーマンとしてのサバイバル能力に直結する。
たぶん5年後には全く別のことを言っているであろう。そしてそれはいいことだと思う。