「顧客の購買プロセスの半分以上は、営業に会う前に終わっている」
変化する企業のマーケティング・営業活動のプロセスについて、マルケトやオラクル、セールスフォースでの経験をもとに記された「THE MODEL」。著者の福田 康隆さんの具体的な経験をもとに1冊にまとめられており、大変に面白かった。
私は営業という職種を経験したことがない。リードを作るマーケ、そのパスを受けるインサイドセールス、実際の商談でクロージングをする営業など、それぞれの役割はどのようなものであるのかさえ、本書を読んで初めて理解したように思う。
売上を作るためにトップラインをどのような目標値にするのか、そのためにチームをどのようにマネジメントするのか等々。具体的な現場の回し方から、セールスフォース、マーク・ベニオフCEOとの会話にみる経営者の視点から、学びの多い本だった。
営業活動の“対象になってきた”自分の目線でも理解できる箇所もあった。例えば:
最後のクロージングが弱いという営業は、営業プロセス後半の交渉や詰めが弱いと思われがちだが、実際はこの初期段階の進め方に課題があることのほうが多い。顧客と会話が盛り上がってとんとん拍子で進んだのに、突然商談が止まってしまうという経験がある人も多いだろう。それは、「こういうことができたら便利なんだけど」という相手の話に付き合わされているだけで、会社としての課題と提案がマッチしていないからだ。解決策として、次ページの図を頭の中に入れながら会話することをお勧めする
こういった部分。こちら側が「なんとなくいいかも」で話を聞いてみて、実際に会った上で導入シーンを検討してみると、ぼんやり実際のニーズを満たしているような満たしていないような……。関係者で改めてすり合わせてみると、どうやら根本的な課題はそこにはないのでは、ということが浮かび上がって商談ストップ、といったような。
先方からすると、あれは商談の初期段階で課題抽出をしっかりやるべきだったんだろうなであるとか、そんなことを思う。
過去にGoogle やほかプラットフォーマーから営業活動を受けた友人からこんな話を聞いた。
「Googleの営業と話していると、向こうはPCも開かずにずっと話を聞いていてさ。気づいたらこっちの困っていることがテーブルにズラリと並んで、いつの間にか一定予算を割くことになっていた。あれすごいね」
なるほど。
また、営業活動における改善フローについても、例えばこういったことが記載されている。
ステージ設計のポイントは「測定可能にすること」と説明したが、これまでのマーケティングにおけるチャレンジは、まさに「測定しづらいこと」にあった。たとえば「購買興味」というステージを設定して、「製品を購買することに興味がある状態」と定義したとしても、測定できなければ意味がない。肝心なのは、 見込客が確実にそのステージにいることを判定する客観的な指標を得ること。 それができれば、感覚でなく、今どのステージにどれだけの見込客がいるのかを把握できる。次の図はその一例……
実際の図は本書を読んでみていただきたいが、クロージングまでのプロセスを分解し、それぞれ効率的にステップを進めるため、それぞれのステージにいる人たちをどのようにして定義してどの程度のラフさまで許容すべきか。そんなことも書かれている。
営業活動ではこんなプロセス / パフォーマンス管理で改善点を抽出するのかと、素人ながら興味深く感じた。
いわゆるメディア界隈で営業以外に活用できるポイントがあるとすると、マーケティングの一環としてのサブスクがあるだろう。どのようにしてリードを獲得し、見込み客に育てて有料購読に結びつけるのか。
リードにいる人をメルマガ購読者とする、商談に進めそうな見込み客をxx PV / 28days と定義する、等々。メディア業界におけるマルケト的な製品としてどのようなものがあるか、私はそこまで把握していないが、漏れ伝え聞くにまだまだ未成熟な状況であるとは理解している。
ユーザーのID管理をしているDBが古くて乗り換えたいが当時の担当者が不在なので難しい、メルマガでもABテストを重ねてリードから優良見込みユーザーに移行を促したいが、関連するサービスが英語でサポートが手薄、なんなら有料購読に結びつけるラストワンマイルの課金導線とキャンペーン管理がなんというかしょb……などなど。
メディア企業の裏側には多くのシステムがあり、どこもみな課題を抱えているようだ。
本書では主にマーケティング・営業活動におけるプロセスや組織について書かれたものではあるが、読んでいて私のいるメディア業界のことを考えることもあった。
とはいえ。特定のモデルを作る、そしてそのためにモデルが(真っ当に)活きる組織を作ること。組織課題の解決、それがまず先決だろう。このあたりは飲みながら話した方が良さそうだ。
興味のある人は、ぜひ読んでみてください。